
小児矯正とは?成長期にできることと治療を始めるタイミング
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著者:田中勝治 歯科医師(田中矯正歯科おとなこども歯科)最終更新日:2026年9月
この記事でわかること
- 小児矯正で成長期にできることと、大人の矯正との違い
- 子どもの歯並びを相談するタイミングと治療開始の考え方
- 経過観察・一期治療・二期治療という選択肢
まずお伝えしたいこと
「前歯がガタガタしてきた」「受け口は早く治した方がよいのかな」と心配しながらも、「まだ子どもだから様子を見てもよいのでは」と迷う保護者の方は少なくありません。実は、小児矯正は早く始めるほどよい治療ではありません。一方で、永久歯への生え替わりや、上下のあごが成長している時期だからこそ、状態を確認しておきたい歯並びもあります。大垣の当院(田中矯正歯科おとなこども歯科)では、年齢だけで開始時期を決めません。歯の生え替わり、骨格、噛み合わせを確認し、「今治療する意味があるのか」から考えます。\[Web予約はこちら\]
小児矯正は「早く歯を並べる治療」ではありません
小児矯正は、成長途中の子どもの歯並びや噛み合わせについて行う矯正治療です。大人の矯正との大きな違いは、
- 乳歯から永久歯へ生え替わる
- これから永久歯が生えてくる
- 上あご・下あごが成長している
- 噛み合わせも変化していく
という点です。そのため、現在見えている歯だけでなく、永久歯が生える位置やスペース、上下のあごの関係まで確認します。「何歳になったから始める」ではありません。同じ7歳でも、乳歯が多く残っている子もいれば、永久歯への生え替わりが進んでいる子もいます。年齢よりも、今何が起きているのかを見ることが大切です。
すぐ治療する場合と、経過を見る場合があります
小児矯正では、装置を使うことだけが選択肢ではありません。大きく分けると、次のような考え方があります。
| 選択肢 | 主な目的 | メリット | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 一般歯科・予防歯科 | むし歯や生え替わりの管理 | 歯の健康を守りながら成長を確認できる | 歯並びそのものを動かす治療ではない |
| 経過観察 | 生え替わりや成長を見る | 不要な治療を避けられる | 定期的な確認が必要 |
| 一期治療 | 成長期に対応する意味がある問題へ介入する | 永久歯列になる前に対応できる場合がある | 二期治療が必要になる場合がある |
| 二期治療 | 永久歯を細かく動かす | 永久歯列全体と噛み合わせを整えられる | 治療期間や装置の負担がある |
一期治療とは
乳歯と永久歯が混ざっている混合歯列期(こんごうしれつき)などに行う治療です。前後・左右の噛み合わせ、永久歯が生えるスペースなどに対応することがあります。
二期治療とは
永久歯がほぼ生えそろってから行う、本格的な矯正治療です。ワイヤーやマウスピース型装置などを用いて、永久歯一本一本の位置と噛み合わせを整えます。
経過観察とは
今すぐ装置を使わず、永久歯への生え替わりや成長を定期的に確認する方法です。「何もしない」という意味ではありません。必要な治療時期を見極めることも、小児矯正の大切な診療です。
早めに相談しておきたい歯並びもあります
すべての子どもに早期治療が必要なわけではありません。一方で、
- 前歯が反対に噛んでいる
- 左右どちらかだけ反対に噛んでいる
- 前歯が噛み合っていない
- 上の前歯が大きく前へ出ている
- 歯が重なって生えてきた
- 永久歯がなかなか生えてこない
- あごを左右や前方へずらして噛んでいる
といった場合は、一度状態を確認してもよいでしょう。日本小児歯科学会も、3歳児歯科健康診断で、反対咬合、上顎前突(じょうがくぜんとつ)、開咬(かいこう)、叢生(そうせい)、交叉咬合(こうさこうごう)などの判定基準を示しています。ただし、健診で指摘されたからといって、すぐに矯正治療を始めるという意味ではありません。「治療を始めるため」ではなく、「今の状態を知るため」に相談するという考え方で構いません。
早期治療には、すべての子どもに共通する答えはありません
「子どものうちに矯正すれば、大人になってから治療しなくてもよい」と思われがちですが、必ずそうなるとは限りません。2025年に発表された、6〜12歳の混合歯列期における早期矯正を調べたシステマティックレビュー・メタ解析では、短期的な改善がみられる場合がある一方、遅く治療した場合などと比べて、長期的に一貫した差は確認されませんでした。一方で、機能的な交叉咬合や、前歯をぶつけるリスクが高い場合など、早期介入を検討する理由があるケースも示されています。
システマティックレビューとは
複数の研究を一定の基準で集め、全体として何が分かっているのかを整理する研究方法です。一つの研究だけで判断するより広く検討できますが、研究対象や治療方法が異なるため、結果をすべての子どもへそのまま当てはめることはできません。
メタ解析とは
複数の研究結果を統計的にまとめ、全体としてどのような傾向があるかを確認する方法です。そのため、小児矯正では「早い方がよいか」ではなく、その治療を今行う理由があるかを確認する必要があります。
「歯列を広げる」と「あごを大きくする」は同じではありません
小児矯正では、「あごを広げる」という説明を聞くことがあります。ただし、装置によって起きる変化には、
- 歯が外側へ移動する
- 歯を支える部分が広がる
- 上あごの骨格へ変化が生じる
などの違いがあります。すべてを「あごが大きくなった」とまとめることはできません。2026年に発表された混合歯列期のマウスピース型装置による歯列拡大のシステマティックレビューでも、計画した拡大量が、そのまますべて実現するわけではないことが報告されています。治療を検討するときには、「この装置で、歯と骨のどこを変えることを目指していますか?」と確認してみてください。
小児矯正をすれば、将来の抜歯を避けられるとは限りません
「子どものうちに歯列を広げれば、将来は歯を抜かなくて済むのでは」と考える方もいます。成長期に永久歯が生えるスペースを整えることが、将来の治療計画に役立つ場合はあります。ただし、将来の抜歯の必要性は、
- 永久歯の大きさ
- あごの大きさ
- 前歯の位置
- 骨格
- 口元
- 歯を支える骨
などから総合的に考えます。一期治療をすれば、将来必ず非抜歯になるわけではありません。永久歯が生えそろった段階で、改めて診断することがあります。
一般歯科・小児歯科と一緒に考えることも大切です
小児矯正では、歯を動かすことだけを考えるわけではありません。装置を使えば歯みがきが難しくなる場合があります。また、治療中にも永久歯は次々と生えてきます。そのため、
- むし歯の確認
- 歯みがき指導
- フッ化物の利用
- 永久歯への生え替わりの確認
- 定期的な歯科検診
なども重要です。当院(田中矯正歯科おとなこども歯科)では、小児矯正と小児歯科・一般歯科を分けず、必要に応じて口の中全体を確認します。歯を並べることだけでなく、その歯を健康に保つことまで考える。これも成長期の治療では欠かせません。
田中勝治が小児矯正でも「永久歯がそろった後」を見る理由
田中勝治は、日本大学大学院松戸歯学研究科で矯正歯科学を専攻し、大学の矯正研究室で教育・研究に携わった後、1990年に大垣で矯正歯科医院を開設しました。これまでの研究・発表では、
- 歯の傾きと歯を支える骨との関係
- 矯正治療における抜歯判断
- 下あごの位置
- 顎関節(がくかんせつ)と噛み合わせ
- 矯正装置を取り付ける方法
- ワイヤーとマウスピースを組み合わせた治療
などを扱ってきました。これらは小児矯正にもつながります。子どもの頃に前歯がきれいに並んだとしても、永久歯への生え替わりと、あごの成長は続きます。そのため、永久歯が生えそろったとき、上下の歯がどこで噛むのか。そこまで見ながら治療を考えることが大切です。
子どもの「今」だけではなく、将来の機能美まで考えます
小さなお子さんの歯並びが整えば、保護者の方にとって安心につながると思います。ただし、小児矯正のゴールは、その時点の写真をきれいにすることだけではありません。その先には永久歯への生え替わりがあります。そして、大人になった後もその歯で食事をしていきます。だからこそ、
- 永久歯がどこへ生えるか
- 歯根がどこに位置するか
- 歯を支える骨との関係
- 上下のあごがどう成長するか
- 前歯だけでなく奥歯まで噛めるか
- 口元と歯並びが調和するか
まで考えます。きれいに見えること。そして、きちんと噛めること。どちらか一方ではなく、両方を将来の治療目標として考える。これが、当院が長年大切にしている「機能美」です。小児矯正は、子どもの時点で完成形をつくるためだけの治療ではありません。成長途中の今から、将来の機能美へどうつなげていくかを考える治療でもあります。
費用について
小児矯正は、一部の疾患などを除いて自由診療となることが一般的です。2026年9月時点では、次の料金体系でご案内しております。金額の詳細は、医院のページにてご確認ください。乳歯列期、混合歯列期、永久歯列期では、必要な検査や治療内容が異なる場合があります。また、一期治療後に二期治療へ進む場合の費用についても、治療開始前に確認してください。
よくある質問
Q1:小児矯正は何歳から始めればよいですか?
全員に共通する開始年齢はありません。歯の生え替わり、噛み合わせ、骨格、永久歯の位置などを確認して判断します。「何歳から」よりも、「今治療する理由があるか」を確認することが大切です。
Q2:小児矯正をすれば、大人になってから矯正しなくても済みますか?
必ずとは言えません。一期治療後にも永久歯への生え替わりやあごの成長は続きます。永久歯がそろった段階で、二期治療が必要になる場合があります。
Q3:学校健診で歯並びを指摘されました。すぐ治療が必要ですか?
指摘されたからといって、直ちに矯正治療が必要とは限りません。まず歯並びや噛み合わせを確認し、今治療する意味があるのか、経過観察でよいのかを相談してください。
小児矯正を相談するときは、次の3点を確認してください
小児矯正について迷ったときには、装置名や開始年齢だけで判断せず、次の3点を確認してください。
- 「今治療することで、何を改善するのですか?」
- 「今は治療せず経過を見るという選択肢はありますか?」
- 「永久歯がそろったとき、どのような歯並びと噛み合わせを目指していますか?」
「矯正を始めると決めている」必要はありません。「今治療した方がよいのか知りたい」「永久歯がそろうまで待ってもよいのか聞きたい」その段階からでも構いません。今だけではなく、永久歯が生えそろった先まで見ること。さらに、きれいに並ぶだけではなく、上下の歯がしっかり噛めるところまで考えること。その積み重ねが、将来の機能美へつながります。
参考情報
- 日本小児歯科学会「3歳児歯科健康診断における不正咬合の判定基準」(新しいタブで開きます)
- PubMed「Does Early Orthodontic Treatment in Mixed Dentition Improve Long-Term Outcomes? A Systematic Review and Meta-Analysis」(新しいタブで開きます)
- 日本矯正歯科学会「診療ガイドライン」(新しいタブで開きます)
免責事項
本ページは一般的な情報であり、症状がある場合は歯科医師にご相談ください。正確な診断には対面での診察が必要です。小児矯正の開始時期や必要な治療は、乳歯・永久歯の生え替わり、歯並び、骨格、あごの成長、永久歯の位置、噛み合わせ、お子さんの協力度などによって異なります。早期矯正によって、将来の抜歯や二期治療を必ず避けられるわけではありません。実際の治療では、今治療する目的、経過観察という選択肢、メリット・デメリット、将来追加治療が必要になる可能性、費用について説明を受けたうえでご判断ください。










